この記事の内容
- 縮毛矯正に使う還元剤の反応
- 第1反応、第2反応を詳しく解説
- 成功と失敗の原因の追求
- ミックスジスルフィド結合が再結合に悪影響を与える
- ミックスジスルフィドの対処方法

今回は僕が徹底的に調べ上げた縮毛矯正における還元反応と還元した際にできる不具合の原因になるミックスジスルフィド結合やその処理や対処方法などの知識を共有する内容の記事です。
還元反応を理解すると成功と失敗の原因が深掘りできるようになる可能性があるので是非参考にしてください。
- 縮毛矯正や髪質改善に特化した美容師さん
- 縮毛矯正が苦手な美容師さん
- 縮毛矯正を上手くなりたい美容師さん
確実に100%正解ではない可能性もあるので、話し半分程度でご覧ください。
縮毛矯正の還元反応とは、SS結合を2つの反応で切断する。

還元とはSS結合(KSSK)を還元させ切断する

縮毛矯正において還元とはジスルフィド結合(SS結合)を切る事ですが、結合が切れていく反応は2段階あります。
この反応を理解しておくことで主に「還元不足、酸化エラー、クセ戻り、未完成の結合による強度の低下、仕上がりのクオリティアップ」に繋げる事ができます。
まず、難しい用語が出るので覚えてください。
- KSSK: ケラチンの結合
- RSH: 還元剤
- KSSR: ミックスジスルフィド結合
- RSSR: 還元剤同士の結合
- KSH: チオール基(切れたSS結合の片方)
それでは解説します。
縮毛矯正の還元反応は2段階ある

実際には複雑な還元反応が起きている。

まず1液を塗布するとSS結合が切れると思うのですが、2段階の反応があります。
- KSSK + RSH ⇄ KSSR + KSH
- KSSR + RSH ⇄ RSSR + KSH
最後にSS結合に戻すにはKSHとKSHの状態にしないといけません。
ここで最後に邪魔になるのはKSSR、RSH、RSSRです。
KSSR (ミックスジスルフィド結合)は再結合しないのでKSHを余らせる原因になり「髪の強度の低下、クセ戻り」の原因になります。
RSH (残留還元剤)で髪に残すと「酸化エラー、ダメージの原因」になる事があり、還元剤の種類により残留がしつこく残り次回のヘアカラーのアルカリで再び活性化したり問題を起こす場合があります。
RSSRはそこまで気にしなくていいのですが、最後の水栓で流れ出します。還元剤と還元剤のSS結合の副産物で、ただのカスのようなものです。チオグリコール酸を使うと「ジチオジグリコール酸(ジチオ)」に変化します。
主に縮毛矯正の還元と酸化結合の邪魔になる原因です。
❶KSSK + RSH ⇄ KSSR + KSH クセ毛を伸ばす還元力が必要

クセ毛を結合を切る還元反応、パワーが必要です。

このプロセスではクセ毛を伸ばす還元力が必要です。還元不足だとクセ毛が伸びません。
ストレート剤を塗布するととりあえず始まる反応で一般的に認知されている反応です。
この反応を言語化すると、還元剤(RSH)を髪に塗布してジスルフィド結合(KSSK)を切断します。そうすると、ミックスジスルフィド結合(KSSR)とSS結合の片割れ(KSH)の2つにまず分裂します。
ここでいきなりKSHとKSHにはなりません。
KSSRというSの片方に還元剤がくっついている状態が1つできます。
これは不安定な結合ですが、結合してしまっているのでシャンプーでは取れません。
そしてKSHとも結合できません。
ミックスジスルフィド結合は再結合できない未完成の結合の片割れになります。
これが髪の強度低下、ダメージの原因、クセ戻りの原因になります。
KSSR + RSH ⇄ RSSR + KSH 穏やかな還元力が適している

❷はKSSRの還元を狙った穏やかな還元力が適している。

続いて二段階目の反応です。ここは重要です。
❶のクセ毛を伸ばす還元力のままいくとKSSRも同時に増え続けますが、適正還元したらもう十分ですよね?
というわけで、二段階目はできてしまったKSSRのみを狙い還元する必要があります。
KSSRは不安定な結合なので弱い還元力で十分というイメージです。
弱い還元を行うとKSSRのみが主に還元されてRSSR(不純物)ともう一つKSHが生成されます。
この段階で❶と❷でKSHが2つになりました。最後は髪の中で「2KSH」のみの状態に限りなく近づける事が重要です。
穏やかな還元力が適している理由です。
2KSH + O → KSSK + H2O 環境を整えてから酸化させる

2剤で酸化させる時点でKSSRはできるだけ残さない事が重要!

最後の酸化結合です。過酸化水素やブロム酸を髪につける事で髪に酸素(O)を与えます。
KSSKが分裂したKSHのHは水素です。SS結合が切れて真ん中に水素が入り結合を妨げている状態です。
ここに酸素を与えると水素を奪いH2つとOが結合して水(H2O)に変わります。
水素が奪われてKSSKに戻ります。
KSSR「ミックスジスルフィド結合」が残ると問題を起こす原因になる。

ミックスジスルフィドが残ると酸化結合できない。未完成なSS結合が残ってしまう

- 赤文字の箇所がミックスジスルフィド結合
- 青はまだ切れていないSS結合(KSSK)
- 緑はKSHとKSHまで還元している箇所
❶の反応の、パワーでいくと緑と赤のどちらも増えてしまいます。
ある程度必要な還元が進めば赤のKSSRを作る必要がありません。
なので❷の反応では赤を減らして緑を増やす還元反応に持っていくとKSSRを減らしながら再結合できるKSHを増やす事ができます。
緑がたくさんある状態はKSHとKSH(2KSH)で酸化結合しやすい状態になるという事です。
ジスルフィド結合(KSSK)SS結合
正常に切れるべきSS結合です。
クセ毛を伸ばしたり、髪の形状を変化させるために❶の段階で切るべき結合
還元不足だとクセ毛が伸びないなどの失敗に繋がるり、過還元だとダメージの原因にもなる。
ミックスジスルフィド結合(KSSR)
ジスルフィド結合を切るために還元を行うと❶の段階で確実にできるのがミックスジスルフィド結合(KSSK)「切れたS(KSH)と還元剤(RSH)」の結合です。
いきなりKSSKを還元してもKSHとKSHにならない。
こいつを❷の段階で適正還元できるか出来ないかがポイント!
SS結合の未完成によるクセ戻りや強度低下のダメージの原因になる。
例外として、サルファイトは2KSHに直で還元される。
ジスルフィド結合とミックスジスルフィド結合に対しての必要な還元力の違い

❶と❷にはそれぞれに適した還元反応があります。

縮毛矯正でクセ戻りの原因について還元不足、アイロンワークのミス、酸化エラーと考えると思いますが、もう一つあります。
KSSRを増やし過ぎて再結合しない箇所が増えていた。
僕はこれも❶と❷の反応から還元不足と考えています。
❷に対する還元不足という事です。
当然、KSSRは酸化しないのでこれも酸化エラーの原因です。
還元反応を理解すると成功や失敗の原因を突き止める時に考える要因が増えますね。
ジスルフィド結合に対しての還元力

美容師さんがチオグリコール酸ベースでシステアミンを配合させる、S1やS2に対して、クセの伸びが甘かったらブーストさせる、アルカリ、中性、酸性などを意識するところです。
クセ毛を伸ばしていくための薬剤調整の話しです。
わかりやすく言うと表面上の適正還元してクセ毛を伸ばすてSS結合を切りましょう!という段階の還元で適したパワーのある還元力が必要になります。
ミックスジスルフィド結合に対しての還元力

よく過還元させてしまってヤバい時に酸性クリームを上から重ね塗りして次回を置く、中間水洗はしっかりやれ!と言われていると思うのですが、実は❷の反応の進行にも関係しています。
酸性クリームを塗る=還元力が下る
水洗する=還元力が下る
SNSとかで見るこの対処方法は実はKSSRに対しての還元に関わる話しだったりします。
還元不足はクセ毛を切る還元力だけの話しじゃなく、KSSRに対して還元不足もあると思います。
酸化エラーも同じで、2液の塗布量やムラ、放置時間だけではなくKSSRが増えていて、そもそも酸化結合しにくい状態だったって事もあり得ます。
平衡反応と可逆反応を意識する。

平衡反応と可逆反応をしると酸化結合しやすくなる。

❶KSSK + RSH ⇄ KSSR + KSH
❷KSSR + RSH ⇄ RSSR + KSH
⇄(平衡反応)
→に行く働き、←に行く働きが同時に働いている状態です。
還元すると→に働き天秤が傾きます。
なので可逆反応で←にも力を働かせてバランスを戻すと反応が安定して再結合に向かいやすくなるというお話しです。
これを理解するのは本当に難しかったです。
では、還元をして→に傾いているので←に戻していくための対処方法を僕の理解で解説していきます。
もしかしたら間違っている可能性もあるかもしれません。
還元力やPHのコントロール

❷の反応を意識します。僕が有効だと思い行っている対処方法は次の通りです。
1液放置でヤバかったら酸性クリームを塗れ!と言われる方法は過還元の対策だけではなくKSSRに適した還元力にするという効果も実はあったりします。
- 流す前にpHを下げて少し時間を置く
- シャンプー台で水を少しずつ薄める意識で乳化する
- 還元剤の濃度とPHをとにかく下げる
これらはすべて還元力を落とす方法です。
還元力が落ちるという事は❷の還元反応を進めるためにも有効です。
水洗をたくさんする

残留還元剤やRSSRを流すという意味ももちろんありますが、水洗をたくさんする事で髪の内部のKSHの位置を調整する事ができます。
水圧でSがズレていき均等になっていくと言われています。
再結合しやすい状態に寄せる効果もあります。
残留還元剤(RSH)とRSSR(還元剤同士の結合のカス)を全力で髪から追い出しつつ、髪の内部を再結合しやすい状態に持っていく効果があります。
アルカリトリートメントを使用する

還元剤を流した状態で髪を柔軟にさせ、薄まった残留還元剤とアルカリの効果で弱い還元が進みます。
酸性や中性寄りのストレート剤を使用した場合でも、アルカリに寄せておく事で過酸化水素が効きやすくなる効果があるので、そうゆう意味でも行います。
また、キューティクルがさらに開くので不純物の追い出しやケラチンやCMCなどの処理剤も入りやすくなります。
ちなみにGMT(エステル)はかなり残留しやすいのですが、アルカリ分解してくれるため、スピエラなどの親油性の還元剤を使用した場合にも残留対策として有効と言われています。
ジチオジグリコール酸、サルファイトの追い込み還元

ジチオジグリコール酸ってさっきのRSSRでしょ?と思うかもしれませんが、若干だけ還元力があります。
僕のやり方では乳化と水洗 → ジチオ → アルカリトリートメントなどの工程で行う事が多いです。
追い込んでクセを伸ばす還元をするというよりも、KSSR用に適した還元をシャンプー台で数分行うイメージです。
サルファイトも有効かと思われます。
サルファイトはKSHとKSHにそのまま還元する反応で「還元力が弱い、残留しにくい」特徴のある還元剤です。
髪の中でKSHとKSSRが残ってしまっている状態でKSHのみを増やしてくれるという理屈です。
銅クロロフィルを使用する

シナジーさんの商品「ベルクロロ」などが該当します。
1液に混ぜると還元効率が良くなり、2液に混ぜると酸化効率が良くなるという効果があります。
銅イオンは「物質を引き寄せる力が働く」とされているため、1液にも2液にも有効です。
注意点として銅クロロフィルは銅イオンです。
キレート処理が必要になります。
ベルクロロには一緒にリンゴ酸がは入っているので、たぶん同時に銅イオンの不着対策も行うという意味で配合されていると思うので、さすが!って感じですね。
銅クロロフィルの製品にキレートと同時に行う成分が入っていない場合は、キレート剤やクエン酸を使うのがベターです。
縮毛矯正が上手いと言われる美容師の定義とは?

何を偉そうに!って話しですよね。
僕が上手い、誰が下手とかそういう話しではなく、自分が使っている薬剤で縮毛矯正をすればクセが伸びて綺麗になる、髪質改善トリートメントをやれば髪にハリコシと艶が出て綺麗になる。
実際になぜそうなるのか?という理由を知る事も大切かなと僕は思っています。
とりあえず、縮毛矯正で還元するとKSSRが邪魔をして失敗の原因を作っている場合も知らずと起きている可能性があるので、いちお知っておいた方がいいですよね。
自分が何を使っているのかわからないと怖くないですか?
実際に理論や理屈などを自分なりに理解して施術を行う事で失敗を減らし、さらにお客様の満足度も上がる施術をできると思っているので、是非僕の知識を少し参考にしてみてください。